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2016年10月31日 (月)

アイヌのための新しい法律に先住権は欠かせない4 市川守弘さん(弁護士)

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アイヌ遺骨返還請求訴訟原告団の記者会見から

2016年10月21日、札幌弁護士会館

●記者

報道によると、アイヌ政策を進めるための新しい法律を模索する動きがあります。みなさんは、遺骨返還要求運動を通じて、先住権の回復・復興を訴えていらっしゃいますが、政府や北海道アイヌ協会の新しい法律のアイディアには、先住権への言及がないようです。新しい法律を作るならこうしたことを求めたい、ということがあればお聞かせ下さい。

●市川守弘さん

非常にタイムリーな質問です。なぜいま、アイヌ新法(アイヌ文化振興法)の改正の問題が出てきているのかというと、アイヌ新法ができた後、日本は国連の世界先住民宣言に署名したんですよ。そうすると国家の義務として、先住民宣言の中身を具体化する国内法の整備をする義務が、いま発生しているのね。そこを押さえないと、いま出てきている立法案をどう評価するかというところにつながらないでしょ。

条約というのは国家間のものだから、あまり具体的ではない。中身が不明確なんです。それを国内法で明確にする義務がいま、日本国政府に発生していて、その中身を具体化するための立法が本来は行なわれなければいけないものなんです。それが一切、世界先住民宣言を具体化する立法案として出てきていないから、あれ(政府・アイヌ政策推進会議や北海道アイヌ協会の提案)は、まったくまやかし、後退、国家としての義務を履行していない結果なんですよ。あれはまったく、つぶさないといけない立法案なんですね。中身が何であれ。

では何が大事かというと、世界先住民宣言をよく読むと、個々人の権利と、集団としての権利と、2つ分けて記載されていて、集団としての権利について、日本国政府は、その集団たる存在がいまないから、集団の権利は日本では認められないという言い方をしているんですよ。その集団としての権利は何かというと、簡単な話、例えばサケ捕獲権だったり、いま畠山さんが言ったような土地所有権なんですよ。そういう権限を一般に先住権といっているし、今回の遺骨の管理権限、遺骨を返せというのも集団の権利なんですよね。じゃあその集団はアイヌの場合なにかといったら、これは歴史的には各コタンなんですよ。各地各地の小集団がコタンとして存在し、そのコタンが土地を所有し、川を支配し、狩猟権を持ち、遺骨、墓地を所有し、管理していたんですね。日本政府は、「そういうコタンがいまないから」と、国連宣言でいう集団としての権限は日本ではありません、したがって個人のための福祉政策にしましょう、というのが日本国政府の立場なんです。だから個々人の権利すらも守っていない。

で、いま重要なのは、立法で何をしなくちゃいけないかっていうと、先住民宣言で言っているその集団を、もういちど再構築する立法的手当てをしないといけない。それがいま、日本国政府に課せられている義務なんです。

そういう例は世界にあってね、たとえばアメリカでは1934年にインディアン再組織法っていう、Indian Reorganization Act という法律をつくって、連邦政府が

カネを供与して、そこで集団を作って、連邦政府が土地を買って、その集団に与えるというやり方をとっていったのね。日本でもそれをやんなくちゃいけない。そういうのを具体化していく。いきなり土地まで行くのが難しければ、まずは遺骨なら遺骨はその集団、コタンの土に返すということを率先してやっていかなければならない。サケの捕獲権も各集団に認めていく、その集団を作っていくと言うことをやんなくちゃいけない。

それに対して、いま(政府や北海道アイヌ協会が)福祉政策しかやらないっていうね、こんなのは憲法25条(すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない)で、アイヌに限定したことじゃないんですよ。一般国民、だれでも受けられる権限なの。そうじゃなくて、世界先住民宣言を請けて国内法化をする義務としては、いま言った先住権を確保できるような集団を、再組織していく。それがいま一番、求められている。それをやらなければ、けっきょくは骨は白老に、土地もね、畠山さんが言ったように市有地のまま、サケの捕獲権も漁組がずっと押さえていて、アイヌがサケを捕ると罰金だぞという話になっちゃう。それを根本的に変えなくちゃいけない、ということです。

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